足摺《あしず》りしながら叫んだ

「毛唐め! やりおる! やりおる! あのように皇国《みくに》の海を人もなげに走りおる!」 慷慨家《こうがいか》の金子は、翼なき身を口惜しむように、足摺《あしず》りしながら叫んだ。「なに、今にメリケンヘ渡ってあの術を奪ってやるのだ。夷人《いじん》の利器によって夷人を追い払うのだ」 寅二郎は、熱海...

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雨が間もなく降り出し

「泥棒をするのが難しいことが、初めてわかったぜ」 勝気な寅二郎は、そういって笑ったが、雨が間もなく降り出し、保土ヶ谷の宿へ丑満《うしみつ》の頃帰ったときは、二人の下帯まで濡《ぬ》れていた。 十一日、十二日と二人は保土ヶ谷の宿で、悶々《もんもん》として過した。 十三日は空がよく晴れ、横浜の沖は、...

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晩春の伊豆半島

          一

 晩春の伊豆半島は、所々《しょしょ》に遅桜《おそざくら》が咲き残り、山懐《やまぶところ》の段々畑に、菜の花が黄色く、夏の近づいたのを示して、日に日に潮が青味を帯びてくる相模灘が縹渺《ひょうびょう》と霞んで、白雲に紛《まぎ》れぬ濃い煙を吐く大島が、水天の際《きわ》に模糊《もこ...

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