保土ヶ谷の宿

 考えてみると、保土ヶ谷の宿で給仕に出た女中が、頻《しき》りに手指を掻いていたのを思い出した。あの女中から伝染《うつ》されたのだと思ったが、どうすることもできなかった。彼は、大事を決行する前に、たとい些細《ささい》な病《やまい》にしろ、こうした病に罹《かか》ったのを悔んだ。彼は、黒船に乗るまでには、...

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足摺《あしず》りしながら叫んだ

「毛唐め! やりおる! やりおる! あのように皇国《みくに》の海を人もなげに走りおる!」 慷慨家《こうがいか》の金子は、翼なき身を口惜しむように、足摺《あしず》りしながら叫んだ。「なに、今にメリケンヘ渡ってあの術を奪ってやるのだ。夷人《いじん》の利器によって夷人を追い払うのだ」 寅二郎は、熱海...

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雨が間もなく降り出し

「泥棒をするのが難しいことが、初めてわかったぜ」 勝気な寅二郎は、そういって笑ったが、雨が間もなく降り出し、保土ヶ谷の宿へ丑満《うしみつ》の頃帰ったときは、二人の下帯まで濡《ぬ》れていた。 十一日、十二日と二人は保土ヶ谷の宿で、悶々《もんもん》として過した。 十三日は空がよく晴れ、横浜の沖は、...

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